最新のオフィスレント・インデックス、空室率は全体に上昇
三幸エステート株式会社(以下、三幸エステート)は10月30日、株式会社ニッセイ基礎研究所と共同で開発した独自の成約賃料に基づくオフィス市場指標「オフィスレント・インデックス」の2023年第3四半期(7~9月)分のデータを公表した。
この調査における「東京都心部」とは、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の都心5区主要オフィス街とその周辺区におけるオフィス集積地域である「五反田・大崎」、「北品川・東品川」、「湯島・本郷・後楽」、「目黒区」のエリアを指す。
「Aクラスビル」とは、延床面積1万坪以上で、1フロア面積が300坪以上、築年数15年以内を満たす物件。「Bクラスビル」は、1フロア面積200坪以上で、築年数が経過したなどAクラスの条件に該当しなくなった物件を含んだものとなる。「Cクラスビル」は1フロア面積100坪以上200坪未満のビルで、こちらには築年数の制限がない。
2023年第3四半期における東京都心部のAクラスビルにおける空室率は6.7%で、前期に比べ0.8ポイント上昇した。2014年第1四半期以来の6%台で、かなり高い水準となっている。第2四半期同様、新築ビルがまとまった面積の空室を残したまま竣工を迎えたことが大きい。
都心部での大量供給により、空室率が押し上げられる傾向が続いている。三幸エステートでは、新規供給のピークは過ぎたものの、なお新築ビルや建築中ビルにおいてテナント誘致に時間を要する傾向が続いており、今後も比較的高い空室率での推移が続く見通しとした。
Aクラスビルの成約ベースによる平均賃料は、坪あたり月額24,652円で、前期に比べ1,003円の下落、前年同期に比べると2,727円の下落になっていた。これで3期連続の賃料下落となり、2020年頃より低下傾向が続いている。
Bクラス・Cクラスでもやや厳しい市場動向に
2023年第3四半期における東京都心部Bクラスビルの空室率は、4.8%で、前期に比べ0.3ポイント悪化した。前年同期に比べると0.4ポイントの改善だが、再びの上昇傾向で動向が注視される。
オフィス戦略の見直しに伴う集約移転や本社移転などで大口の現空床が発生、主な上昇要因になっているとされる。大量供給年として、今年竣工の新築物件へ移転するテナントの発生を受けた二次空室募集で大きく上昇することも懸念されたが、そこまでの空室率上昇はみられず、こうした動きが本格化してはいないと分析された。
ただしコロナ禍を契機とした働き方やオフィス戦略の大幅な見直しなどで、新築ビルへの移転を契機にオフィス面積を縮小させる事例も増えることが予想され、二次空室発生の動きがどう市場全体に影響を与えてくるか、注意してみていく必要がある。
平均賃料は、坪あたり月額18,120円で、前期に比べ425円の下落、前年同期比では439円の下落となった。第2四半期で18,000円台を回復し、上昇傾向を記録したところから、再び下落となったものの、2019年第3四半期を直近のピークに続いてきた賃料下落の傾向は鈍化しつつあるといえ、一服したともみえる。
Cクラスビルでは、空室率が4.5%と、前期に比べ0.1ポイント上昇した。前年同期比では0.5ポイント改善している。4期ぶりの上昇でやや悪化したものの、小幅な変動にとどまった。複数の新築ビルが空室を残して竣工する中、既存ビルでは空室消化が進み、その結果空室率の上昇は限定的となったとみられる。
平均賃料は、坪あたり月額16,339円で、前期に比べ343円下落、前年同期比では333円の下落になった。2期連続の下落傾向だが、空室率と同じく小幅な動きで、賃料推移は2020年第4四半期以降、およそ横ばい傾向を続けている。
賃料の対前年変動率はAクラスビルで悪化幅がやや縮小
東京都心部の各クラスビルで、賃料の対前年変動率を算出・分析すると、Aクラスビルはマイナス10.0%、Bクラスビルでマイナス2.4%、Cクラスビルがマイナス2.0%となった。4期連続で全クラスがマイナス水準にあり、依然厳しい状況は続いている。
A・Bクラスビルにおいては、これでマイナス水準が14期連続となった。ただしAクラスビルをみると、2023年第2四半期に比べ、そのマイナス幅は1.8ポイントの縮小になっている。
(画像はプレスリリースより)
三幸エステート株式会社 プレスリリース
https://www.sanko-e.co.jp/publish_2023-Q3.pdf