三幸エステートが最新のオフィスデータを公開
三幸エステート株式会社(以下、三幸エステート)は10日、2023年10月分のオフィス市況をまとめた「オフィスマーケットレポート 2023年11月号」を公開した。全国主要都市のデータとして、東京都心5区のほか、札幌市、仙台市、名古屋市、大阪市、福岡市の資料を閲覧することができる。
この調査における東京都心5区とは、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区のこと。対象となるのは大規模ビルで、1フロア面積200坪以上の賃貸オフィスビルを指す。「空室率」は、貸付総面積に対する現空面積の割合で、それに対し「潜在空室率」は、貸付総面積に対する募集面積の割合で算定したものとなる。
募集面積とは、各統計日時点で公開されているテナント募集面積の合計である。統計開始日は1994年1月1日となっている。
市場に影響を及ぼすマクロ経済動向として、ニッセイ基礎研究所では、11月15日に内閣府が公表する2023年7~9月期の実質GDP成長率は年率マイナス0.9%となり、4四半期ぶりのマイナス成長になると見込んでいるという。10~12月期には、海外経済が減速する一方、国内需要が底堅く推移する見通しであり、こちらでは年率1%程度のプラス成長になると予測された。
2023年9月の完全失業率は、総務省調査で前月より0.1ポイント低下し、2.6%とわずかながら改善した。厚生労働省の発表する有効求人倍率は前月比で横ばい、その先行指標となる新規求人倍率は前月比で悪化しているため、今後はやや悪影響が現れてくる可能性がある。
宿泊・サービス業で就業者数の大幅増加が続いているが、製造業などその他業種で求人数の減少が確認されているという。
2023年10月における東京都心5区大規模ビルの空室率は、5.14%で、前月に比べ0.07ポイント低下した。前月の9月が微増で5.2%台となっていたが、再び下げて8月時の水準に近づいている。
今年竣工した新築ビルや築浅ビルを中心に空室床の消化が進んでおり、わずかではあるが改善傾向が記録された。しかしなお5%台という比較的高い水準にあることには違いない。
潜在空室率は7.47%で、こちらも前月より0.24ポイント低下した。直近5カ月で最も低い値になる。
賃料は28,000円前後で推移
2023年10月の東京都心5区大規模ビルにおける募集賃料は、月額坪あたり28,027円で、前月に比べ27円の下落となった。ごくわずかだが、再び下落に転じている。
長期的にみると、坪あたり28,000円前後での小幅な動きを続けており、およそ横ばい傾向にあるといえる。募集状況が改善した一部のビル物件では、賃貸条件を引き上げるケースも確認されているものの、大口の募集床を抱えるビルなどでは、テナント誘致を目的とする条件の見直し、キャンペーンが活発に行われており、賃料が大きく伸びる市場動向にはなっていない。
募集面積は636,958坪で、前月より16,508坪減少した。
区別にみた空室率では、新規供給が集中している港区で8.20%と高い値になった。空室を抱えたまま竣工を迎えるケースが続いているためで、大量供給のピークは越えたものの、空室率は今後も当面高水準になると見込まれている。
一方、中央区は6.20%、新宿区は3.93%で、小幅ながら低下傾向にあった。さらに渋谷区の場合、渋谷駅を中心に旺盛なオフィスニーズがあり、1.90%とかなり低い水準まで空室率が下がった。2020年9月以来の1%台になる。
渋谷駅周辺に集積するIT系企業の場合、テレワークを維持しつつも、徐々に出社率を高めたり、業績好調による人員増を進めたりしていることから、館内増床や拡張移転などのオフィス戦略がとられる事例が増えており、活況となった。
立地条件などと賃料水準のバランスが良好な既存ビルでは品薄感が漂い始め、新築ビルや建築中ビルへの引き合いも強くなっているという。エリア外からの流入もあり、渋谷区の需要は堅調なようだ。
(画像はプレスリリースより)
三幸エステート株式会社 プレスリリース(「東京都心5区大規模ビル オフィスマーケットレポート 2023年11月号」公開資料)
https://www.sanko-e.co.jp/pdf/data/202311_tokyo_om.pdf