新規供給量増大の中、空室増加は限定的
大手総合不動産コンサルティングサービス企業であり、投資運用会社でもあるコリアーズ・インターナショナル・ジャパン株式会社(以下、コリアーズ・ジャパン)は11月2日、「東京オフィスマーケットレポート」の最新版となる2023年第3四半期(7~9月期)分のデータを公開した。
東京主要5区のグレードAオフィスに関する市況と今後の見通しをまとめたもので、不動産市場の概況をつかむことができる。
この調査における東京主要5区とは、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区を指す。また、グレードAオフィスとは、基準階面積が概ね300坪以上の物件で、主に賃貸向けとなっているオフィスビルの中から、コリアーズ・ジャパンが独自の基準により選定したものとなっている。
発表によると、東京主要5区では、2023年第3四半期の期間中に約10万坪の新規物件供給があり、通年で予定されているグレードAオフィス新規供給の実に半分以上が今期に含まれたという。中でも港区の「虎ノ門ヒルズステーションタワー」と「麻布台ヒルズ森JPタワー」は、注目度も高い今年最大の新築物件になっている。
大量の新規供給があったことから、空室増が懸念されたものの、市場における需要も徐々に回復、テナントの内定が順調に進んで、市場は安定した推移をみせるものとなった。新たなワークスタイルに合わせた、効率的な使い方でのオフィス移転計画を進める企業が増えている。
ただし、新築物件に関しては、工事の手配や各種申請にかなりの時間を要するようになっており、入居までにかかる時間も長期化している。そのため、新規物件への移転テナントによる二次空室の発生影響は、現時点で限定的であり、今後が注視される。
2023年全体での新規供給量は、合計20万坪程度になる見通しで、この値は過去5年間で2番目に多いものとなる。コロナ後の移行や働き方改革など、ワークスタイルの見直しや、企業の魅力創出に寄与するオフィス戦略で移転需要が刺激され、市場は想定よりも安定しているという。
コリアーズ・ジャパンでは、この状況が継続された場合、2023年末までには年間の需要が供給を上回り、空室率低下につながる可能性もあるとした。
一方で、取引の活発化がみられながらも、オフィススペースの効率化へ向かう動きも引き続き強いことから、需要の回復は緩やかとなり、賃料水準など低下した要素の本格的回復がみられるまでには、まだ時間がかかり、追加の後押しも必要になると考えられている。
よって、平均想定成約賃料の今後の予測は、横ばいから小幅な下落見通しとなった。
エリア別では再開発がポイントに
エリア別の動向をみると、日本橋・八重洲・京橋エリアでは、一部の大型物件におけるテナント退去が発生し、空室率の上昇がみられたものの、賃料はなお上昇基調を維持する結果となった。再開発の進行が下支え要因になっているとみられる。
これらエリアと、賃料が緩やかな下落傾向を続けている丸の内・大手町エリアとの差が徐々に縮まってきており、トップを走る丸の内・大手町を追う競争力の向上が確認された。
渋谷エリアでは、空室率が他のエリアに比べ低水準となっており、2023年10~12月期に竣工を予定する物件の内定状況も好調であるという。主にテック企業の底堅い需要があり、渋谷エリアの強さが感じられるデータとなった。
その他の赤坂・六本木や、品川・港南エリア、西新宿エリアなどでは、空室率が概ね下落傾向で、少しずつ市況の改善となる需要回復がみられてきているが、未だ賃料水準の回復にはつながっておらず、引き続き横ばい傾向となっている。
(画像はプレスリリースより)
コリアーズ・インターナショナル・ジャパン株式会社 プレスリリース(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/00000071.000046143.html