新規供給の影響もあり空室率が反転上昇
三鬼商事株式会社は8日、2022年8月分の全国主要都市におけるオフィスビル最新市況調査結果をまとめた、オフィスマーケットレポートを公開した。東京ビジネス地区のほか、大阪、名古屋、札幌、仙台、横浜、福岡の各エリアにおける動向を見ることができる。
この調査では、「東京ビジネス地区」を千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区の都心5区と定義、この都心5区内にある基準階面積100坪以上の主要貸事務所ビルを調査対象としている。
「新築ビル」とは、調査月を含め、過去12カ月間に竣工を迎えたビルであり、「既存ビル」は調査月の12カ月前までに竣工したビルを指す。今回の調査期間である2022年8月の場合、新築ビルに該当する物件が26棟、既存ビルに該当する物件が2,573棟で、対象は合計2,599棟だった。
2022年8月における東京ビジネス地区の平均空室率は、全体平均で6.49%となり、前月より0.12ポイント、前年同月より0.18ポイント上昇した。前月の7月には微減傾向となり、3月以降6.38%付近を前後する動きが続いたが、今期はその水準よりもやや悪化している。
解約の影響は少なかったものの、大型成約の動きが見られなかったことや、ややまとまった新規供給があったことが影響したと考えられている。東京ビジネス地区全体の空室面積は、この1カ月間で約11,000坪増加した。
「新築ビル」の空室率は42.12%で、前月より3.40ポイント、前年同月より31.51ポイント上昇した。空室率として、ついに40%を超える水準まで悪化が進んだ。8月の間に5棟が募集面積を残して竣工したため、空室率が押し上げられたという。
一方、「既存ビル」の空室率は6.07%で、前月より0.08ポイント、前年同月と比較しても0.18ポイント低下した。2カ月連続のマイナスで、わずかながら改善傾向が見られている。オフィスの統合や集約などに伴う中小規模の成約があったこと、解約の動きが少なかったことから、空室率の低下につながった。
平均賃料は25カ月連続で下落
2022年8月の東京ビジネス地区における平均賃料は、全体で月額坪あたり20,250円となり、前月より12円、率にして0.06%、前年同月より682円、率にして3.26%の下落になった。これで25カ月連続の下落を記録したものとなり、長く緩やかなマイナス傾向が続いている。
「新築ビル」の平均賃料は、月額坪あたり26,068円で、前月より1,068円上昇した。前年同月比では3,941円の下落ながら、再び2万円台の後半水準を取り戻している。
これに対し、「既存ビル」の平均賃料は、月額坪あたり20,135円で、前月より51円、前年同月より705円下落した。
平均空室率を区別に分析すると、千代田区と渋谷区は前月比で低下、港区と新宿区、渋谷区は前年同月比で低下している。千代田区の平均空室率は4.92%で、5%を切り、3月以来の4%台となった。中央区は前月比、前年同月比とも悪化傾向で、7.59%にまで高まっている。
港区は8.29%で5区中最も高いが、前年同月比では0.20ポイント低下した。前月に比べると0.12ポイント悪化している。新宿区は5.74%、前月比、前年同月比ともマイナスで改善傾向となった渋谷区は4.20%で、5区中でも最も低い空室率を記録した。
区別の平均賃料は、中央区、新宿区、渋谷区が前月比で上昇したが、前年同月比では全ての区が下落となった。千代田区は月額坪あたり22,013円で、前月より51円、前年同月より549円低下している。中央区は、月額坪あたり18,489円で、5区中では最も低い水準だが、前月より78円上昇した。
港区は月額坪あたり20,116円、前月より65円、前年同月より1,087円の下落になっている。前年同月に比較した下落幅では、港区が際立って大きく、唯一1,000円を超過している。
新宿区は月額坪あたり18,537円、前月より39円上昇したが、前年同月比では575円の下落になった。渋谷区は月額坪あたり21,525円で、前月より8円上昇、ほぼ横ばいとなった。前年同月比では711円の下落になっている。
(画像は三鬼商事「オフィスマーケットレポート 東京ビジネス地区 2022年9月号」公開資料より)
三鬼商事株式会社 「オフィスマーケットレポート 最新オフィスビル市況 2022年8月東京ビジネス地区」公開資料
https://www.miki-shoji.co.jp/三鬼商事株式会社 ホームページ
https://www.miki-shoji.co.jp/