建築事業者や建築主、金融・会計・投資分野関係者との連携を円滑に
国土交通省は24日、木造非住宅建築物の普及と市場価値向上を目的とする「木造建築物の耐久性に係る評価のためのガイドライン」を策定、公表した。
近年、環境配慮への関心の高まりから、建築分野では省エネ対策に加え、森林での炭素貯蔵と建物への炭素固定などの観点から、適切な木造利用促進が重要とみられており、とくに木造化率の低い中大規模建築物や非住宅建築物での木材利用拡大が必要とされている。
中大規模の建築物の場合、企業会計実務や資金調達(融資・REITなどの不動産投資)において、減価償却の期間が建築物の実態に応じて適切に評価されることが重要となる。現在、この償却期間設定では、具体的期間を規定した指標となるものが税制上の法定耐用年数しかなく、慣行としてしばしばこれが用いられている。
しかし、その場合、鉄筋コンクリート造に比べ、木造建築は耐用年数が相対的に短いものとなることから、その実態と乖離して他構造より総じて耐久性が低いと誤解されるなどの問題も生じているという。
その結果、融資期間が短く設定されたり、融資実行が困難となったり、不動産投資では、REITにおいて償却期間の短さから年あたりの減価償却費が大きくなり、配当金原資が少なくなる可能性があることから、投資インセンティブにネガティブに働くこともある。
法人が木造建築物を建設しようとしても、やはり年当たりの減価償却費が大きくなり、企業会計上の損益計算書の収益性悪化を招きやすいことから、ステークホルダーへの説明などが困難になるとみなされる場合もあった。
木造建築物の耐久性評価においては、住宅性能評価における劣化対策等級やエンジニアリングレポートなどの制度もあるが、前者は対象が住宅限定であること、後者は建築物の物理的現状を広い観点から調査するものであるため耐久性のみを評価したい場合に費用負担が過剰となってしまうことで、あまり利用が進んでいないという問題もある。
こうした現状を踏まえ、木造の非住宅建築物における耐久性の第三者評価を簡便に活用できる環境を整備し、建築事業者や建築主、金融・会計・投資分野の関係者らとの連携を促進、資産価値の可視化を通じた木造建築物の普及と市場価値向上を図るべく、今回のガイドライン策定が行われた。
来年4月以降、評価申請受付開始へ
ガイドラインの評価対象となるのは、新築の木造(混構造を含む)の非住宅建築物。
木造建築物の耐久性の場合、構造躯体の内部への雨水の浸入防止、雨水浸入があった場合の速やかな排出、雨水の浸入・滞留が生じた際の構造躯体への防腐・防蟻処理が重要となる。
よって、これら措置が適切に講じられているならば、一定の耐久性をもった建築物と評価するという。要求水準は、通常想定される自然条件、維持管理条件下でその建築物が限界状態となるまでの期間が50年以上となるよう、構造躯体を構成する部材の劣化を軽減する対策が講じられていることとなる。
評価は、平面図や断面図、仕様書(仕上げ表)などの設計図書に必要事項を明示し、その内容を登録住宅性能評価機関が審査するかたちで行う。
国土交通省では、2025年1月以降、このガイドラインに基づく評価を実施する、登録住宅性能評価機関を募集し、4月以降に評価の申請受付を開始する予定とした。
国土交通省 プレスリリース
https://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_001253.html