AKJ Partners「高所得サラリーマンの増税」を解説
税理士法人 AKJパートナーズ(AKJ Partners)はこのほど、国が方針を固めている今後の税制改正について、特に「高所得サラリーマンに対する税制改正」にスポットを当てた解説を発表した。
税制改正では、海外企業の進出促進などを理由に法人税率を減少させる方針だ。その一方で富裕層への所得税率や、モノやサービスの購入によって確実な徴収が見込める消費税率、さらに相続税率が上昇する見込みだ。
所得控除の削減で実質増税が続く高所得サラリーマン
近年、高所得サラリーマンな対する給与所得控除は減額傾向にあり、実質的な増税が続いている。
サラリーマンの所得税は、収入である給与から、必要経費に当たる「給与所得控除」を差し引いた金額を「給与所得」として、これに課税が行われる。さらに給与所得から、配偶者控除や扶養控除、基礎控除などを差し引いた金額が実質の課税対象額となる。
所得から一定の金額が差し引かれる控除は、税負担を軽減させるための措置である。このため高額所得者に対しては、控除額の適用制限が設けられる傾向がある。
税制改正による給与所得控除の変化
これまでの税制改正による給与所得控除の変化は、以下の通りである。
2013年~2015年は、年収が「1500万円」以上の給与所得控除の上限が245万円だった。
これが翌2016年からは、年収「1200万円」以上の給与所得控除の上限を230万円とすることに決まった。
さらに2017年からは年収「1000万円」以上の給与所得控除の上限が220万円に改正され、2020年以降は年収「850万円」以上の給与所得控除の上限が195万円になった。
高所得サラリーマンには配偶者控除や基礎控除もなし
給与所得から控除される「配偶者控除」「扶養控除」「基礎控除」についても、高所得者に対する減額が顕著だ。
税制改正によって、合計所得金額が「900万円以下」であれば、老年者を除く一般の配偶者控除は38万円である。それが「900万円超~950万円以下」になると26万円、「950万円超~1000万円以下」では13万円、「1000万円超」では控除額は適用されず0円である。
基礎控除額については2020年の税制改正によって、38万円から48万円に増額された。だが合計所得金額が2400万円以上の高所得サラリーマンに対しては、所得額によって段階的な削減が実施されている。
「2400万円超~2450万円以下」の基礎控除額は32万円、「2450万円超~2500万円以下」は16万円、そして「2500万円超」からは基礎控除は行われず0円となる。
これら配偶者控除と基礎控除の削減が行われたことにより、2015年と2020年の納税額は以下のような変化がみられる。
年収1500万円以上の高所得サラリーマンの場合、所得控除額は245万円から195万円に削減され、その差額は50万円となる。
さらに年収1500万円~2000万円で配偶者の収入が103万円以下であれば、配偶者控除38万円が適用されない。
所得控除の差額50万円+配偶者控除の喪失額38万円により、合計で88万円の控除がなくなる。その結果、88万円に住民税込みの税率を掛けると、およそ38万円の増税となるのだ。
年収3000万円の場合は、基礎控除も適用されない。
所得控除の差額50万円+配偶者控除(配偶者の収入が103万円以下)の喪失額38万円+基礎控除の喪失額48万円=136万円の控除がなくなり、これに税率を掛けるとおよそ69万円の増税となる。
また社会保険料も年々料率が上昇しており、高額所得サラリーマンに対する増税の加速を後押ししている。
(画像はプレスリリースより)
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