三幸エステートが最新のオフィスマーケットデータを公開
三幸エステート株式会社(以下、三幸エステート)は12日、2023年5月度のオフィスマーケットデータを公開した。東京都心5区のほか、東京、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡の全国6大都市における大規模賃貸オフィスビルの市場動向を見ることができる。
ここでの東京都心5区とは、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区を、大規模ビルは1フロア面積が200坪以上の賃貸オフィスビルのことを指す。
また「空室率」は貸付総面積に対する「現空面積」の割合であり、「潜在空室率」は貸付総面積に対する「募集面積」の割合、既存ビルのテナント退去前を含む募集床を対象に調査している。募集面積とは、各統計日時点で公開されている、テナント募集面積の合計である。なお統計開始日は1994年1月1日という。
この時期のマクロ経済動向として、実質GDP成長率は2022年度の実績が1.2%に対し、2023年度は0.9%、2024年度は1.6%と予測されるところとなった。
ニッセイ基礎研究所によると、2023年度に輸出減少で成長率が低下するものの、2024年度には堅調な国内需要と海外経済の持ち直しを背景に成長率がアップすると考えられるという。
失業率は2023年4月の完全失業率で2.6%、前月より0.2ポイント改善した。有効求人倍率は前月から横ばいだが、その先行指標となる新規求人倍率は3カ月連続で低下、今後の悪化が懸念されている。
空室率が4.30%にまで低下
2023年5月の東京都心5区大規模ビル空室率は4.30%で、前月より0.18ポイント低下した。2カ月連続の低下となり、2023年3月の4.59%から改善、4%台の前半になっている。
今年竣工した新築ビルにおけるテナント誘致が順調に進んだことに加え、働き方の見直しに伴う大口成約もあった。5月は空室を残しての新築ビル竣工もなく、拡張など積極的オフィス戦略での移転などでも空室消化が進んだ。
潜在空室率は7.20%で、こちらも前月より0.23ポイント低下、2カ月連続で改善傾向になった。
募集賃料は横ばい
2023年5月の東京都心5区大規模ビルにおける募集賃料は、共益費込みで月額坪あたり28,104円で、前月より124円の上昇、28,000円台を回復した。空室率の改善と同様、2カ月連続のプラスでやや明るさもみられるが、上昇幅はさほど大きくない。
むしろ昨年1月以降、28,000円前後での動きが継続し、横ばい傾向になっているといえ、今後の動向が注視される。市場では大口の募集床を抱えるビルを中心に、テナント誘致を目指す条件の見直しやキャンペーンの実施もみられているという。
募集面積は692,389坪で、前月より18,005坪減少した。こちらも横ばいの動きが続いており、直近15カ月は70万坪前後の推移になっている。
オフィス需要の重要な指標のひとつであるネット・アブソープション(吸収需要)は、一定期間におけるテナントの入居面積(稼働面積)の増減がどれほどかを示している。
オフィスニーズの回復に伴い、2022年第2四半期から第4四半期においては、供給を上回る需要が記録されたが、直近の2023年第1四半期は4期ぶりに新規供給が需要を上回った。需要がマイナス水準になる傾向からは改善してきているが、供給過剰の状態は注意が必要と考えられる。
三幸エステートのアナリストによると、20万坪超が見込まれる今年の新規供給は、第2四半期にピークを迎えるという。供給が需要を上回る状況が続いた場合、今後空室率は再び上昇に向かうと推測され、あわせて動向をみていく必要があるとされた。
(画像はプレスリリースより)
三幸エステート 東京都心5区大規模ビル 2023年6月分オフィスマーケットレポート公開資料(プレスリリース)
https://www.sanko-e.co.jp/pdf/data/202306_tokyo_om.pdf