グローバル・リンク・マネジメントによる最新意識調査
投資用不動産を取り扱う株式会社グローナル・リンク・マネジメントは24日、同社の研究機関「グローバル都市不動産研究所」からの調査結果報告として、全国の不動産投資家におけるESGへの意識調査を実施、その結果を公開した。
調査・研究の取り組みとしては第14弾にあたり、ESGへの意識調査としては、これが昨年に続く2回目の実施になる。
調査は、投資用不動産保有者である全国男女を対象に、2022年1月13日~1月17日の期間、インターネット・アンケート方式で実施し、400人から有効回答を得た。
回答者の年代内訳は、20代が52人、30代が120人、40代120人、50代54人、60代で54人となっている。
まず、「ESG」という言葉そのものを聞いたことがあるかどうか尋ねたところ、今回は41.0%が「ある」と回答していた。2021年の33.8%から7.2ポイント上昇している。ESGの知名度が上がってきたといえるだろう。
続いて、不動産投資においてリスク・リターンだけでなく、環境や社会への好悪影響を考慮する「不動産のESG投資」について知っているかどうか尋ねたところ、「知っていた」人は30.5%で、前回の2021年時から6.2ポイント上昇していた。
こちらからも認知度の改善がみられる。ただし、まだ「知らなかった」人も69.5%と約7割にのぼり、今後のさらなる認知向上が課題であることも判明した。
不動産投資でのESGも重要と考える人が増加中
「不動産のESG投資」について、投資先判断の材料や要素として重要と思うかどうかを尋ねたところ、「重要だと思う」人は31.0%、「どちらかというと重要だと思う」人が44.8%となり、この2つを合わせた計75.8%の人は、一定以上重要だと考えていた。
2021年の時点と比較すると、「重要だと思う」人が6.0ポイント増加、「どちらかというと重要だと思う」人は3.2ポイント減少している。よって合計では2.8ポイントのアップになった。
なお今回調査で「どちらかというと重要ではないと思う」人は13.8%、「重要ではないと思う」人は10.5%だった。全体にESGを重要とする認識が広がってきたとみられる。
重要だと思うとした人に、その理由を複数回答可で尋ねたところ、「中長期的な資産価値の維持に寄与すると思うため」が最も多い52.8%、2位は「賃料収入などリターンに好影響をもたらすと思うため」の50.8%だった。
このトップ2の理由が過半で、2021年にも上位理由だったが、さらにその回答率を伸ばしてきている。
3位は「環境や社会の持続性のためにひとりひとりができる行動をすべきと思うため」の37.3%、4位は「自分の資産運用目的と合致するため」の12.9%だった。
コロナ影響からか健康性・快適性への意識がアップ
「不動産のESG投資」を重要だと思うとした人に、とくにどういった分野で重要だと考えるか問うたところ、最も多かったのは「健康性・快適性の向上」の48.8%だった。前回に比べ7.0ポイント増加し、順位も3位から1位へのランクアップになっている。
2位は「地域社会・経済への寄与」の47.9%、3位が「気候変動への対応」の42.2%だった。以下4位は「災害への対応」の40.9%、5位に「超少子高齢化への対応」の23.8%などと続く。
新型コロナウイルスの感染拡大に収束傾向がみられず、コロナ禍が長引いていることによって、テレワークの普及や外出自粛などから在宅時間が増加、「健康性・快適性」を重視する傾向が強まったとみられた。
4位の「災害への対応」も前回に比べ7.0ポイント増加しており、防災意識の高まりも特徴的傾向といえる。
今後の不動産投資でESGを意識するかどうか尋ねた結果では、「必ず意識すると思う」は20.5%、「投資目的によっては意識すると思う」が45.0%、「投資対象となる物件によっては意識すると思う」が19.8%だった。「意識しないと思う」人は14.8%にとどまり、前回よりも2.0ポイント減少している。
「必ず意識する」とした投資家が2割を超えたこと、理由を問わず意識する人が合計で85.2%にのぼったことは、ESGへの関心、意識の高まりを示すに十分な結果といえそうだ。
どのような目的であれば、不動産投資でESGを意識するか、具体的に尋ねたところ、「余剰資金の活用」が43.7%でトップになった。前回比で8.9ポイントもの増加になっている。
2位は「不労所得・売却益の獲得」の42.2%、3位は「老後の年金対策の41.6%だった。比較的余裕のある部分の資金活用と、不動産のESG投資に親和性が高いとみられていることがうかがわれる。
以下、4位は「将来の住居としての取得」の24.0%、5位に「所得税・住民税対策」の21.4%、6位「相続税対策」の11.7%などとなった。
6%程度までならESG対応での増額を許容する向き
立地や用途などの条件が同じで、ESG対応を進めている不動産物件とそうではない物件があったとし、ESG対応によって価格の増額がみられた場合には、どの程度まで許容できるかを尋ねた。
すると「意識はするが、購入費用に差が出ることは許容できない」人が27.6%にみられたものの、残る72.4%は増額も一定程度許容できるとしていた。
「1~2%」なら許容する人は19.4%、「3~4%」まで許容可能」は20.5%、「5~6%」で20.8%だが、「7~8%」になると4.4%にまで減少する。「9~10%」は5.6%、「11%以上」は1.8%だった。
前回調査に比べ、「1~2%」が3.5ポイント増加、シビアになってきている面もみられるが、「9~10%」まで許容できる人も2.0ポイント増加している。
考え方、捉え方に多様性が出てきているとも考えられるだろう。ただし、およその傾向としては1~6%までを許容範囲とする向きが強い。
物件タイプとして、どのような物件であればESGを意識するか尋ねたところ、「ワンルーム区分マンション」が最も多く42.2%となった。2021年の前回調査時から9.8ポイントの増加と大きく伸び、圧倒的なトップになっている。
2位は「ファミリー向け区分マンション」の32.6%で、こちらも前回調査時から5.3ポイントのアップになった。区分マンションが伸びをみせ、上位2つを独占している。
3位が「一棟マンション」の29.0%、4位は「一棟アパート」で21.4%、5位が「戸建」の20.5%、6位に「シェアハウス」10.3%、7位「賃貸併用住宅」の9.4%、8位は「ホテル」の8.8%、9位「事務所・店舗」の8.2%、10位が「一棟ビル」で7.0%などとなった。
企業への投融資におけるESG評価は市場全体として広がってきているが、ホテルが該当分野中の最上位で8位にとどまり、事務所・店舗、商業施設、物流・倉庫、データセンターといった非レジデンス分野はいずれも1割に満たず、低位に沈んでいる。
ESGを配慮した不動産に対する価値が上昇してくると予測される昨今だが、これら非レジデンス分野の物件を含む投資対象への意識が、今後どのように変化していくか、注視が必要とみられた。
(画像はプレスリリースより)
株式会社グローバル・リンク・マネジメント プレスリリース
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