脱炭素社会実現に向け、新築住宅など適合義務化へ
「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」について、13日に参議院本会議での審議が行われ、全会一致で可決、成立となった。建築物省エネ法のほか、関連する建築基準法、建築士法、住宅金融支援機構法などにおける改正が実行される。
この法律案は、2050年のカーボンニュートラル、2030年度の温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)の実現に向け、急務とされる建築物分野における取組を進めるためのもの。建築物分野は国内エネルギー消費量の約3割を占めているほか、温室効果ガスの吸収源対策強化を図る面でも、木材需要の約4割を占める領域であるため、早期の対応が求められてきた。
この改正法により、建築物の省エネ性能のさらなる向上を図る対策に関し、抜本的強化がなされるほか、木材利用の適正化促進に資する規制の合理化などが進められることとなる。
省エネ性能底上げ、木材利用促進へ
主なポイントとして、まず現在は床面積300平米以上の非住宅建築物のみとなっている省エネ基準への適合を、2025年度以降は全ての新築住宅と非住宅建築物で義務付けるものとすることが挙げられている。
また、大手事業者による段階的な省エネ性能の向上を進めるトップランナー制度の拡充、販売や賃貸時における省エネ性能表示の推進も内容に含まれる。これにより、2030年以降の新築をZEH・ZEB水準へと誘導する方針だ。
住宅ストックの省エネ改修や再エネ設備の導入促進という面では、省エネ改修に対する独立行政法人住宅金融支援機構の低利融資制度を創設する。さらに市町村が定める再エネ利用促進区域内で、建築士から建築主への再エネ設備の導入効果説明が義務化される。
このほか、省エネ改修や再エネ設備の導入に支障となると考えられる高さ制限などについては、合理化を図るとしている。
木材利用を促進に向けては、大規模建築物について、大断面材を活用した建築物全体の木造化や、防火区画を活用した部分的木造化を可能にしたり、防火規制上の別棟扱いを認め、低層部分の木造化を可能にしたりするといった変更を適用する。
また、二級建築士でも行える簡易な構造計算で建築できる木造建築物の高さを13メートル以下から16メートル以下とするなど合理化を進め、3階建て木造建築物の建築を拡大する。
ほかに省エネ基準などにかかる適合性チェックの仕組み整備なども進める。国では、これら全体で2030年度時点の建築物にかかるエネルギー消費量を、2013年度比で約889万kL削減するとの目標を掲げている。
法案は今後、公布から3年以内に施行されることとなる。
参議院 議案情報
https://www.sangiin.go.jp/首相官邸 定例閣議案件(公布・法律)
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