マクロ経済動向はやや改善
三幸エステート株式会社は15日、2022年1月度のオフィスマーケットデータを更新し、各エリアの市場動向について発表した。東京都心5区の大規模ビルなど、ジャンルを指定して確認することができる。
今期のマクロ経済動向としては、株式会社ニッセイ基礎研究所の調査で、2021年10~12月の実質GDP成長率は、内閣府発表でプラス5.6%になると見込んでおり、2四半期ぶりのプラス成長予測となった。
2022年1~3月期もプラス成長と予想されているが、新型コロナの感染再拡大を受けた緊急事態宣言発令など、事態によってはマイナス成長に陥る可能性も否定できないとされる。
2021年度全体ではプラス2.7%を予想、2022年度でプラス2.5%、2023年度でプラス1.7%が見込まれた。成長率の幅は低下するが、プラスは維持される見通しとなっている。
12月の完全失業率は、総務省による労働力調査で2.7%となった。再び改善傾向がみられており、構成同労相の発表する有効求人倍率やその先行指標となる新規求人倍率も前月より上昇、プラス要因が増えてきている。
一方、昨年末にかけては対面型サービス業を中心に雇用情勢が持ち直す動きがみられていたが、今後は足踏みとなる可能性が高いとも指摘されている。
2021年度の失業率予測は2.9%、2022年度は2.8%、2023年度は2.7%の予想となり、ごく緩やかに低下、改善していくとみられた。
空室率は4%前後が5カ月連続
このオフィスマーケット調査における「東京都心5区」とは、千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区を指す。また「大規模ビル」は1フロア面積200坪以上の賃貸オフィスビルで、空室率は貸付総面積に帯する現空面積の割合を示すと定義されている。
一方、「潜在空室率」は貸付総面積における募集面積の割合で、既存ビルにおいてテナント退去前を含む募集床を対象として調べたものになる。「募集面積」とは、各統計日において公開されているテナント募集面積の合計である。
2022年1月の東京都心5区大規模ビル空室率は、前月より0.01ポイント上昇し、3.99%となった。2021年9月に3.97%を記録していこう、ほぼ横ばいで4%前後の水準を保っている。
オフィス需要の活発化に加え、大口の一時需要も生じており、比較的築浅のビル物件を中心に空室床の消化が進んできているとされる。
その一方、テレワークの普及など出社率低下を踏まえたオフィス再編による解約床はなお目立ち、現空となっていることから、空室率は思うほど低下せず、小幅な動きにとどまる。
潜在空室率をみると、2022年1月は7.60%で、前月に比べ0.22ポイント悪化した。2021年10月の7.63%から低下傾向を続けていたが、3カ月ぶりに上昇へ転じている。
募集賃料は下落傾向続く
2022年1月の東京都心5区大規模ビルの募集賃料は、共益費込みで月額坪あたり28,328円となり、前月より144円下落した。28,000円台と、ある程度高水準は維持しているが、これで5カ月連続の下落になっている。
引き続き低下傾向にあるとされ、オフィス需要がコロナ前の旺盛な勢いを取り戻しておらず、足元で募集面積の増加が生じているため、オーナー側にも先行きを警戒する向きが強い。
早期テナント誘致のため、フリーレントを含めたキャンペーンの実施に踏み切る動きが続いており、こうした傾向が募集賃料水準の低下につながっていると考えられた。
募集面積は2022年1月で652,946坪となり、前月より10,012坪増加している。
成約面積の推移をみると、2021年は約372,000坪で、大幅に少なかった2020年と比較すると、34%もの増加になっていた。リーシング活動の活発化が確認されたといえる。
主にIT業界などで業容拡大を図る企業が増えていることに加え、オフィス移転を契機にアフターコロナへの対応を進める企業が出てきており、これらの企業による成約が全体を押し上げる要因となった。
成約面積が増加する一方で、建築中ビルでの成約が占める割合は、直近10年と比較すると、2年連続で低水準になっている。来年は大量供給が予定されており、現時点で内定率が伸び悩んでいるビルも少なくないという。
建築中ビルに対する需要の具体化は、これからが本番とみられ、市場の動向が注視されるところとなっている。
(画像は公開資料より)
三幸エステート株式会社 「オフィスマーケットレポート 東京都心5区大規模ビル 2022年2月号(2022年1月分)」公開資料
https://www.sanko-e.co.jp/pdf/data/202202_tokyo_om.pdf三幸エステート株式会社 ホームページ
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