労働者の年金増、制度を知っていたのは約3分の1
株式会社日本マーケティングリサーチ機構は16日、全国の男女を対象とする「年金制度」に関する一般調査を実施し、その結果をとりまとめて公開した。
2022年4月に年金制度改正法が施行され、新制度として「在職定時改定」が導入されるなど、より働くシニアに寄り添った設計となることを前に実施された調査で、年金に関する知識や最新情報がどのくらい一般に認知されているかといった点などが明らかにされている。
調査は、2022年1月13日~2月10日の期間、10代~70代の全国男女を対象に、インターネット・アンケート方式で行われたもので、1,257件の有効回答を得た。
今回の改正では、「在職定時改定」制度が導入され、4月以降、65歳以上で在職中の人の老齢厚生年金が年1回改定され、支給年金額が増加する。
これまでは65歳以降に老齢厚生年金を受給しながら厚生年金保険に加入して就労していても、在職中に支払った保険料は即座に年金額へ反映されることはなく、退職時や70歳到達時など資格喪失となって初めて年金額が改定されるルールとなっていた。
今回の制度変更で、就労継続による効果が退職を待たず年金額に反映されるようになり、65歳以上の高年齢労働者における経済基盤の充実が図られる。
また、60~64歳の在職老齢年金制度について、支給停止の現行基準額は28万円となっていたが、これが4月以降は47万円に引き上げられる。よってこの面で受け取れる年金額が増える人も出てくるとみられる。
このほか年金受給開始時期について、現行では繰り下げ受給の上限年齢が70歳となっているが、これを75歳に引き上げる変更もなされる。75歳からの受給開始とした場合、年金月額は84%増額となるため、ライフプランによって選択すれば、より充実した額を得られるようになるとも考えられる。
こうした変更点を受けた調査として、まず年金制度が改正され65歳以上の労働者の年金が増える可能性があることを知っているか尋ねたところ、「知っていた」とする人は33.73%にとどまり、「知らなかった」人が66.27%にのぼった。
約3分の2は内容を認知しておらず、高齢者が働きやすい環境整備やモチベーションの維持・向上、柔軟な年金運用によるライフプランの設計促進といった新制度の目的が十分に浸透していない可能性が考えられる。
意識変容効果も限定的か
続いて、年金制度の改正が決まる前から65歳以降も働こうと思っていたかどうか尋ねると、「働こうと思っていた」人が29.99%、「働こうと思っていなかった」人は29.51%となった。いずれも3割弱で拮抗している。
残りの「どちらでもない」人は40.49%にのぼり、この層が最多を占める。
年金制度が改正されることにより、65歳以降も働こうと思うようになったかどうかを尋ねた結果では、「元々働こうと思っていた」人が28.80%、「年金制度の改正があって働こうと思った」人は11.22%、「働こうと思わない」人が22.28%で、「どちらでもない」人は37.71%だった。
新たに働くモチベーションを得た人は1割強で、将来設計としてなお決めかねている人も多く、今回の改正がもたらす意識や行動の変容はやや限定的なものになる見通しも強まった。
(画像はプレスリリースより)
株式会社日本マーケティングリサーチ機構によるプレスリリース(PR TIMES)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001194.000033417.html