住宅金融支援機構が発表、3月末公開予定
独立行政法人住宅金融支援機構は15日、同機構が事務局を務め、マンション管理などの関係団体、民間金融機関などが参加メンバーとなっている「マンションの価値向上に資する金融支援の実施協議会」からの発表として、2021年度の取組結果と今後の方向性に関する報告書資料を公開した。
この協議会では、近年、深刻な社会問題の1つとなりつつある高経年マンションのさまざまな課題に対し、必要な措置を進めていくため、2018年度から管理組合のガバナンス低下を防ぐ管理適正化支援、融資などに関する民間金融機関の参入支援、共用部分リフォーム融資の商品性改善の早期実現といったポイントを中心に、協議・検討を行ってきている。
今回の報告書によると、すでに取組として完了した内容もあるため、現状の課題と今後重点を置くべき取組項目について再整理を実施したという。
その中で、マンション管理組合の「工事・資金計画」の不安解消に向けた対策は、2021年度においてとくに力点を置いて展開されたものとなっている。
管理組合の管理適正化支援に属するこの取組では、新たに「大規模修繕の手引き~マンション管理組合が知っておきたい工事・資金計画のポイント」と題した資料が作成された。
修繕工事に関する必要な情報を提供し、管理組合が抱く資金面の不安を軽減して、大規模修繕工事の実施を円滑にするための一助としてもらう。
資料はダイジェスト版、詳細版の2種類が作成されており、3月末にも住宅金融支援機構のホームページより公開となる予定だ。
過去資料のバージョンアップや「与信モデル」構築も
マンションの規模や築年数、予定される修繕工事の内容、修繕積立金徴収額など基本情報を入力することで、現状に基づく平均的大規模修繕工事に関する費用や負担額、積立金の過不足状況といった試算結果を確認でき、さらにそれをどう改善すれば良いか、また改善後の試算結果はどうなるかを見ることができる「マンションライフサイクルシミュレーション~長期修繕ナビ」について、バージョンアップを実施したことも報告された。
バージョンアップでは、想定戸数規模を「1~100戸」から「1~300戸」まで拡張したほか、2021年9月に改正された長期修繕計画作成ガイドラインに対応したものとすべく、鉄部塗装、電灯設備、給排水設備などの工事周期における修正が施されている。
またシミュレーション結果をExcelで出力したり、修繕積立金の専有面積当たり月額単価表示を行ったりすることが可能になり、入力項目の上限値拡張、マンションすまい・る債の積立状況表示への対応といった改善もなされた。
民間金融機関の参入支援に関する取組としては、住宅金融支援機構が保有するデータなどを活用した、管理組合向けの「与信モデル」を新たに構築した。詳細な活用方法については、今後民間金融機関などと協議の上、さらに検討を進めていく方針としている。
22年度は情報発信や相談支援を強化、長期資金計画のあり方についても検討
2022年度は、協議会として「マンション管理適正化支援に関する連携の方策・取組の実践」をさらに進めていく方針とする。
地方公共団体などとの連携による積極的情報発信や相談支援に努めるほか、マンション管理など関係団体の取組との双方向で連携強化を図っていくという。
さらに金融支援の観点から、マンションの適切な維持管理・修繕工事の実施を支援するための基盤整備を進める。
新規取組事項としては、「高経年マンションの長期的な資金計画のあり方に関する検討」を協議会のテーマとして追加し、現状課題の共有や、適切な資金計画、金融支援のあり方についての検討などを行っていくとしている。
独立行政法人住宅金融支援機構 プレスリリース
https://www.jhf.go.jp/files/400359991.pdf