帝国データバンクが市場動向資料となる企業の休廃業・解散調査結果を公開
株式会社帝国データバンク(以下、帝国データバンク)は21日、2022年1~3月期の全国企業における「休廃業・解散」動向調査を実施し、その結果をとりまとめて公開した。
それによると、2022年1~3月期に全国で休廃業または解散となった企業は、個人事業主を含む速報値で13,251件だった。前年同期に比べ4.2%減少し、低い水準が続いている。
ただし、前期である2021年10~12月期に比べると増加に転じた。四半期として増加を記録したのは、2021年4~6月期以来の3四半期ぶりになる。
これまでのところ、企業の半数超が活用しているとされる無利子・無担保融資や資本制劣後ローンなど、政府による事実上の資本注入策により、新型コロナの打撃がありながらも、かえって中小零細企業の経営が下支えされ、経営不振から事業継続を断念する休廃業・解散にいたる流れは、全体として抑制された状態が続いてきている。
しかし、資産が負債を上回る資産超過企業の割合は、2022年1~3月期で63.3%と前年同期を下回ったほか、利益が黒字かつ資産超過となっている健全企業の割合は、全体の6.6%と、こちらも前年同期より低い水準となった。
長期化するコロナ禍で3年目を迎えた今年は、無利子・無担保融資の元本返済と利払いが本格化してくるタイミングとなり、返済見通しが立たない慢性的経営不振企業、資金繰りが苦しい中小企業の休廃業が顕著に増えてくる可能性があるとみられている。
他業種に比べても早い底打ち感の「建設・不動産」
業種別では、建設業、製造業、卸売業、小売業、運輸・通信業、サービス業、不動産業の7業種全てで、休廃業・解散の合計件数が前年同期を下回った。
とくにトラック輸送など運輸・通信業は、2022年1~3月期が138件で、前年同期より25.8%の減少と、大幅に少なくなった。小売業やサービス業も、それぞれ10.5%、12.3%の減少と、2桁減になっている。これら業種は休廃業・解散の少ない、安定した市場動向となっているといえる。
一方、不動産市場として直接的に関係する建設業と不動産業は、ごく小幅な減少にとどまった。建設業は1,502件で、前年同期比0.6%の減少とほぼ横ばい、不動産業は431件、前年同期比で1.8%の微減であった。
建設業における内装工事や土木工事など、不動産業では土地賃貸業などでそれぞれ増加傾向が目立ってきていると報告されており、他業種よりも早期に、底打ちから増加へ転じる可能性が高まっている。
企業の資金繰りを支えてきたコロナ融資の返済がスタートする今年、ロシアによるウクライナ侵攻を発端とした原料や燃料価格の高騰といった要素も重なることから、事業者にとっては、より一層厳しい経営環境の中でのビジネス展開になると予測される。
テナント入居なども含め、一般市場経済動向は不動産投資にも大きく影響を与えるところとなる。また建設業・不動産業といった業界動向としても、市場の活況を左右する企業経営状況は注視しておく必要があるだろう。
先行き不透明感から、自ら事業を断念するといった廃業ケースも、2021年以上に増加しうることが懸念されており、これまで以上に最新の経済動向を踏まえた投資検討が求められることとなりそうだ。
(画像はプレスリリースより)
株式会社帝国データバンクによるプレスリリース(PR TIMES)
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