R65が調査、超高齢社会のニーズはどこへ
株式会社R65(以下、R65)は15日、「高齢者(65歳以上)向け賃貸に関する実態調査」を、全国の賃貸業を手がける不動産管理会社を対象に実施し、その結果をとりまとめて公開した。
世界で最も高齢化率が高い国となっている日本だが、賃貸住宅への入居を断られる高齢者は多く、今後ますます高齢者の「住宅難民」が増える恐れがあるとされる。
一方で、そうしたすくわれていないニーズが存在するということは、そこに投資運用のチャンスがあるとも考えられる。現状の高齢者向け賃貸物件の動向と、対応物件の運用に関する課題を確認したい。
この調査は、2022年8月10日に、全国の賃貸業を行う不動産管理会社に勤務している、または経営している人を対象として、インターネット・アンケート方式により実施された。860人の有効回答が得られている。
まず、管理戸数全体に対する「高齢者(65歳以上)が入居可能な賃貸住宅」の割合が、どの程度であるかを尋ねた。すると「0%(ない)」が全体の25.7%、「0%超20%未満」が28.9%、「20%以上40%未満」は15.7%、「40%以上60%未満」が9.0%、「60%以上80%未満」は4.5%、「80%以上」は16.2%となった。
4社に1社以上が、高齢者の入居可能な物件を全く持っていないことが分かる。また、20%未満で合計すると全体の54.6%を占め、過半となった。
管理戸数が3,000戸未満かそれ以上かで分類し、集計すると、管理戸数3,000戸未満の不動産会社の場合、「0%」が30.5%でさらに多くなった。「0%超20%未満」も30.1%と多い。「20%以上40%未満」は15.7%、「40%以上60%未満」が7.5%、「60%以上80%未満」は1.9%、「80%以上」は14.2%だった。
一方、管理戸数3,000戸以上の不動産会社では、「0%」は6.7%と有意に少なくなり、「0%超20%未満」も23.9%となった。しかし、それでも20%未満の会社が30.6%と、3割超を占める。
「20%以上40%未満」は15.7%、「40%以上60%未満」と「60%以上80%未満」はいずれも14.9%、「80%以上」が23.9%だった。
これらから、管理戸数が少ない不動産会社ほど、高齢者の入居可能な賃貸住宅がない可能性が高いこと、また一方で「80%以上」を入居可能とする会社は全体でも約6分の1、3,000戸以上を扱う会社では4分の1弱と、比較的多いことが分かる。
空室率を低く抑えるため、多様な入居者ニーズに応ずる会社も出てきているなど、高齢者の入居可能な賃貸物件割合には、さまざまな要素を踏まえた会社間格差が大きくあるようだ。
不安は「孤独死による事故物件化」
直近1年間で、年齢を理由に高齢者の入居を断ったことがあるかどうかを尋ねると、「断ったことがある」は28.3%だった。「断ったことはないが、不安があった」が36.0%で最も多く、「断ったことはないし、不安もなかった」は35.7%となった。
こうした入居拒否の割合については、管理戸数が3,000戸未満か、それ以上かで分類集計しても、ほとんど差がみられず、「断ったことがある」のは3,000戸未満の不動産会社で28.3%、3,000戸以上で28.4%だった。
前問とあわせて考えると、入居可能な賃貸住宅をどれほど扱っているかとの相関関係はあまりないことが分かる。
高齢者の入居後に実際にトラブルがあったかどうかを尋ねた結果では、「トラブルがあった」は57.3%だった。内容に関しては、入居前の不安で「孤独死による事故物件化」が77.8%と際立って高く、次いで「死後の残置物の処理」が52.0%となった。
3位は「家賃滞納」の34.6%、4位に「火災」の23.4%、5位が「近隣住民からの苦情」の17.4%、6位「立ち退き交渉」の17.0%、「その他」は0.7%となっている。
これに対し、実際の入居後のトラブルでみると、トップは不安点と同じ「孤独死による事故物件化」だったが、その割合は56.3%で、20ポイント以上、不安より低い結果になった。2位は「家賃滞納」の42.6%で、こちらは入居前不安より実際のトラブルの方が多い。
3位は「死後の残置物の処理」の37.5%、4位に「近隣住民からの苦情」の20.8%、5位は「立ち退き交渉」で13.4%、6位に「火災」の11.0%、「その他」が2.4%だった。
「孤独死による事故物件化」と、「死後の残置物処理」に関しては、事前の死後事務委任契約による取り決めのほか、昨年設けられたガイドラインによる事故物件の定義の明確化、増加する見守りサービスの導入などにより、現在では回避可能なリスクとなってきているため、解決策が浸透していないことに問題があると考えられる。
これに対し「家賃滞納」や「火災」、「近隣住民からの苦情」に関しては、認知症の発症など認知能力の低下の問題が背景にあるとみられている。
今後の受け入れにはまだ迷う向きも
今後の高齢者の賃貸住宅への受け入れについて、積極的に実施すべきと思うかどうかを尋ねたところ、「とてもそう思う」は13.6%で、「ややそう思う」が24.7%となった。
「あまりそう思わない」は10.7%と約1割で、「全くそう思わない」は4.2%とごくわずかになったが、「どちらとも言えない」との回答が46.9%を占め、半数近くにのぼった。
少子高齢化など、社会変化に伴うニーズの移り変わりを受け、事業面でも社会問題面でも、対応が必要であり、受け入れ強化を推進すべきと考えられてはいるものの、イメージとして存在するリスクの大きさから決めかねる中立的な回答が多かったとみられる。
(画像はプレスリリースより)
株式会社R65によるプレスリリース(PR TIMES)
https://prtimes.jp/000000015.000068855.html